歯ぎしりの原因は?大切な歯の破折を防ぐ「歯ぎしり・食いしばり治療」

「朝起きると顎が疲れている」
「歯がすり減ってきていると言われた」
「集中していると、いつの間にか歯を強く噛みしめている」
このように感じたことはありませんか。
歯ぎしりや食いしばりは、音が大きくて家族に指摘されて気づく場合もあれば、まったく自覚がないまま続いている場合もあります。
ご自身では問題だと気づきにくい症状の一つです。
しかし、歯ぎしり・食いしばりは、単なる癖だからと放っておいてよい問題ではありません。
人間の噛む力の強さは自分の体重程度といわれており、寝ているときの歯ぎしりは、その倍、つまり100kgもの力が歯に加わるのです。
長期間にわたって続けることで、歯そのものや詰め物・被せ物、顎の関節などに、少しずつ負担をかけていきます。
特に、歯の破折(歯が割れてしまうこと)は、歯を残せなくなる大きな原因の一つですので、注意が必要です。
今回は、「歯ぎしりの原因」や、歯を守るために当院で行っている「歯ぎしり・食いしばり治療」について、できるだけわかりやすく解説します。
参照:J-STAGE|認知症治療研究会会誌7巻 (2021) 2号|認知症の歯ぎしりとめまいの関係 >
四方田 拓 院長
●2010年 日本歯科大学歯学部卒業
●同年 日本歯科大学附属病院にて研修医
●2011年 日本歯科大学附属病院総合診療科入局(防衛省共済組合歯科室に2年間出張)
●2017年 日本歯科大学附属病院退職
●2017年 飯田橋内科歯科クリニック勤務
●2018年 同院院長就任
●2019年 飯田橋内科歯科クリニック退職
医院名:不動前さくら歯科クリニック
所在地: 〒141-0031
東京都品川区西五反田4丁目29-14 2F
Contents
歯ぎしりの原因は一つではありません

歯ぎしりの原因について、「これが原因です」と一つに決めることはできません。
複数の要因が重なり合って起こるものと考えられています。
生活習慣、心身の状態、かみ合わせ、睡眠の質など、さまざまな要素が影響し合い、その結果として歯ぎしりや食いしばりが現れます。
まずは、代表的な原因について見ていきましょう。
歯ぎしりとストレスや緊張との関係
歯ぎしりとストレスに関するさまざまな研究では、歯ぎしりとストレスや精神的な緊張との関連が指摘されています。
しかし、すべての歯ぎしりがストレスによって起こるわけではないともいわれており、現在では、歯ぎしりは、睡眠中の身体の反応や脳の働き、噛む筋肉の使い方など、いくつかの要素が重なって起こるものと考えられています。
かみ合わせや歯並びの影響
かみ合わせや歯並びの状態も、歯ぎしりの原因として関係していることがあります。
上下の歯の接触が均等でない場合、無意識に噛みやすい位置を探そうとし、特定の歯に力が集中しやすくなります。その状態が続くと、歯ぎしりや食いしばりにつながることがあります。
ただし、「かみ合わせが悪いから歯ぎしりが起こる」と単純に言い切れるわけではありません。
かみ合わせはあくまで複数ある要因の一つであり、ストレスや生活習慣など、ほかの要素と重なって影響しているケースが多いと考えられています。
歯ぎしりは「眠りが浅くなるタイミング」に起こりやすいことがわかっています
睡眠中の歯ぎしりについては、「ぐっすり眠っている最中」よりも、眠りが浅くなったり、一瞬目が覚めそうになるタイミングに起こりやすいことが、わかっています。
実際に、睡眠の状態を詳しく調べた研究では、睡眠中に起こった歯ぎしりの約86%が、眠りが浅くなる変化と同時に歯ぎしりが起きていたと報告されています。
このことから、歯ぎしりは「無意識の癖」というよりも、睡眠中の身体の反応の一つとして起こる場合が多いと考えられているのです。
このことから、歯ぎしりは、「ストレスがあるから必ず起こるもの」「性格によるもの」といった単純な理由だけで説明できるものではなく、眠りの状態や、身体が一瞬目覚めかける際の反応と関係して起こることが多いと考えられるようになってきています。
参照:J-STAGE|睡眠時ブラキシズムの基礎と最新の捉え方(総説) >
歯ぎしりを放置すると起こりやすいトラブル

歯ぎしりは、すぐに強い痛みが出る症状ではありません。
そのため、「今は困っていないから」と放置されやすい傾向があります。
しかし、長期間にわたって続くと、歯やお口全体にさまざまなトラブルが起こりやすくなるため注意が必要です。
歯のすり減り・破折のリスク
歯ぎしりの際に歯にかかる力は、食事のときよりも強い傾向があります。
この力が毎晩のように繰り返しかかることで、歯の表面が徐々にすり減り、目に見えない細かなひびが入ることがあります。
特に注意が必要なのが歯の破折です。
歯が割れてしまうと、むし歯がなくても歯を残すことが難しくなり、抜歯を検討せざるを得ないケースもあります。
詰め物・被せ物が外れやすくなる
歯ぎしりや食いしばりがあると、詰め物や被せ物に強い力が加わります。
その結果、外れやすくなったり、欠けたりして、治療のやり直しが必要になることがあります。
治療を繰り返すことは、その歯への負担をさらに大きくしてしまうため、注意が必要です。
顎や筋肉への負担
歯ぎしりや食いしばりは歯だけでなく、顎の関節や周囲の筋肉にも負担をかけ、「顎関節症」を引き起こすこともあります。
朝起きたときに顎の疲れ、口を開けにくい感覚、こめかみの違和感などはありませんか。
それは、歯ぎしり・食いしばりと関係している場合があります。
歯ぎしり・食いしばりへの対処は「お一人お一人に合わせて考える」ことが大切です

歯ぎしりや食いしばりには、「これをすれば必ず止まる」と言い切れる方法がないのが現状です。
というのも、歯ぎしりが起こる背景は、お一人お一人で異なり、いくつかの要素が重なっていることが多いからです。
そのため、治療や対処を考える際には、「歯ぎしりを完全になくすこと」だけを目標にするのではなく、今のお口の状態や生活の中で感じていることに目を向けながら、歯や顎にかかる負担を少しずつ減らし、大切な歯を守っていくことが大切です。
無理のない方法を一緒に考えながら、長く安心して過ごせる状態をめざしていきましょう。
マウスピース「ナイトガード」による治療

歯ぎしり・食いしばりへの対処として、多くの歯科医療の現場で行われている方法が、マウスピース「ナイトガード」を用いた治療です。
就寝中にマウスピースを装着することで、歯や顎にかかる負担を和らげることを目的としています。
具体的には、
・歯と歯が直接、強く当たるのを防ぐ
・噛む力をマウスピース全体で受け止め、歯への力を分散する
・歯のすり減りや破折、被せ物の欠けや外れを防ぐ
といった働きが期待されます。
歯ぎしりは、眠っている間に無意識に起こることが多いため、完全に止めることが難しい場合もあります。
そのため、歯ぎしりが起こることを前提に、歯を守る方法としてマウスピースが用いられてきました。
ただし、マウスピースは歯ぎしりそのものをなくす治療ではありません。
あくまで、歯ぎしりが起きたときに歯や顎へのダメージを減らすための対処法であることを理解しておくことが大切です。
また、市販のマウスピースではかみ合わせが合わず、違和感や顎への負担につながることもあります。
歯科医院でお口の状態に合わせて製作することで、装着時の違和感を抑えながら、より適切に歯を守ることができます。
生活習慣を整えることも、歯ぎしり対策の一つです
歯ぎしりは、ストレス、飲酒、喫煙、服薬、睡眠の乱れなどが関係している可能性があります。
こうした要素が重なっている場合、生活習慣に目を向けることで、歯ぎしりが起こりにくい状態をめざせることがあるのです。
たとえば、強い緊張が続いていると、眠っている間も身体が完全に休めず、無意識の噛みしめにつながることがあります。
また、就寝前の飲酒や喫煙は、眠りを浅くしやすく、歯ぎしりが起こりやすいタイミングを増やす一因になることもあります。
服用しているお薬や、睡眠の質が関係しているケースもあり、その場合には医科と連携した対応が必要になることもあります。
ただし、生活習慣を整えることだけで、歯ぎしりが完全になくなるわけではありません。
あくまで、歯ぎしりが起こる背景に目を向け、歯や顎にかかる負担を増やさないための土台づくりと考えることが大切です。
歯科での治療やケアとあわせて、無理のない範囲で生活習慣を見直していくことが、歯を守るための一つの方法です。
当院で行っている「ボツリヌス治療」とは

歯ぎしり・食いしばりを放置すると、歯の破折や被せ物のトラブルなど、将来的に歯を失うリスクが高まる可能性があります。
当院では、そのような事態を防ぐために、歯を守ることを第一に考えた治療を行っています。
お口の状態や歯ぎしりの強さ、生活背景などを丁寧に確認した上で、無理のない方法を一緒に考えていきましょう。
ボツリヌス治療は噛む力を和らげることが目的
当院で行っている治療の一つが、ボツリヌス治療です。
これは、噛む力に大きく関わる筋肉(おもに咬筋)に薬剤(ボツリヌストキシン製剤)を注入し、噛む力を弱めることで、歯や顎にかかる負担を一時的にやわらげることを目的とした治療です。
歯ぎしりや食いしばりによって、噛む筋肉に強い力がかかっている場合に、負担を軽くする方法の一つとして用いられることがあります。
歯ぎしりの力が非常に強い場合、マウスピースだけでは歯への負担を十分に軽減できないこともあるのです。
そのようなケースでは、歯を破折から守るための選択肢の一つとして、ボツリヌス治療を検討することがあります。
ボツリヌス治療の注意点
・自由診療です。
・すべての方に適した治療ではなく、お口や全身の状態によっては適応にならない場合があります。
・効果のあらわれ方には個人差があります。
・効果は永久的なものではありません。
当院では、治療の目的や期待できる点、注意点について丁寧にご説明し、患者さんにご納得いただいた上で、慎重に適応を判断しています。
歯ぎしり・食いしばりが気になる方はご相談ください

歯ぎしりや食いしばりは、決して珍しいものではありません。
一方で、「仕方がないもの」「我慢するしかないもの」と考えてしまい、相談のタイミングを逃してしまう方も少なくありません。
当院は、患者さんお一人お一人のお口の状態やお悩みに寄り添いながら、歯を守るための治療やケアをご提案しています。
「歯ぎしりの原因を知りたい」
「歯が割れないか心配」
「今の状態でできる対策を知りたい」
歯ぎしり・食いしばりへの適切な対応で、これから先の歯の健康を守るためにも、そのような思いがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。



